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WHITEPAPER ホワイトペーパー

2.0プロジェクトについて

2.2 課題

先に述べた音楽業界の構造的変化やトレンドの背景に対して、以下の課題があると考えます。

アーティストの収益モデルの変化と活動資金の逼迫

「定価販売」がスタンダードなビジネスモデルとなっている中、アーティストの収益はファンの熱量に比例しにくいため、ライブやイベントの収益化に限界がある点も課題視されています。また、人気アーティストのライブ・コンサートでは会場の不足なども相まって、その枯渇感からチケットの二次流通市場では高額転売が広がり、熱量の高いファンがライブに参加したくても参加できない状況が増えているだけでなく、転売による収益はアーティスト側には還元されないため、アーティストが本来得られるべき収益が減少するという問題が生じています。

また、音楽配信やストリーミングサービスが主流になったことにより、アーティストの収益構造は大きく変化しました。ストリーミング再生によるアーティストの報酬はわずかであり、多くの再生回数を得なければ十分な収益にはつながりません。その上、近年では音楽生成AIによって既存楽曲が使用され、AI生成楽曲がストリーミングで再生される機会も増えているため、アーティストの収益が相対的に脅かされるという新たな課題も生じています。

さらにストリーミングサービスとSNSの普及により、アーティストは国境を越えて世界中のファンにリーチできるようになりましたが、グローバル市場への進出には複数の国や地域をターゲットにしたプロモーションが必要になるため、ノウハウや戦略、リソースの確保に加え、多額の資金を要します。既存の収益モデルが十分なスケーラビリティを持たないため、こうした活動資金の安定的な確保は難しく、グローバル進出を目指すアーティストにとって大きな課題となっています。

アーティストとファンの共創の場の不足

ファンダムが持つ行動力や創造力は、アーティストにとって新たな価値を生み出す機会があるにもかかわらず、活用の場が十分に提供されていないという課題があります。
例えば、ファンダムの中には、アーティストの新曲を自分なりにアレンジして楽しんだり、アート作品を作ってSNSにアップしたりするなど、独自のクリエイティブな活動をしているファンがいます。また、アーティストの誕生日やデビュー記念日にはファンが自主的に企画をしてSNSなどで祝うことも増えています。こうした活動には、ファンの強い愛情と熱意が反映されており、アーティストにとっても新しい価値や注目を生み出す力を持っています。
しかし、ファンの活動がアーティスト本人や公式プロジェクトとつながることは少なく、アーティストとファンが共に創作活動に参加し、アイデアを共有できる場やプラットフォームが未だに整っていないというのが現状です。共創のプロセスを支える場やプロジェクトがあれば、ファンはより深くアーティストと関わり、アーティストもファンのサポートを感じながら創作活動に励むことができます。このような仕組みが不足しているため、アーティストとファンの新しい関係性や創造的な価値の実現が課題となっています。